前回の記事で、AIが変えていく世界を上流から下流へ6つの段階(バケット)に分けて記録していること、そして「AI関連だから」ではなく「値動きの主な要因にAIが見えるか」を入口の目安(包含テスト)にしていることを書きました。
ここでは、その一歩先。個別の銘柄を具体的にどの段階へ置くのか、当サイトが使っている分類ルールを、判断が割れやすい実例とともに公開します。
基本ルール:「何で動くか」で決める
分類の出発点は、業種名でも会社の自己紹介でもありません。その株の値動きを実際に駆動しているものは何か、それひとつです。会社のイメージではなく、株価を動かす材料の出どころで、置く段階を決めます。
このルールが効くのは、段階の境界線の上にいる銘柄です。分類のクセが一番出る境界を、順に見ていきます。
境界1:①「計算をつくる」と②「容れ物を建てる」のあいだ
同じ「半導体関連」と呼ばれる銘柄でも、置く段階は分かれます。チップそのものを設計・製造する会社は、チップの需給で動くので①。そのチップを組み込んだ装置・サーバー・ネットワーク機器を作る会社は、それがどこに設置されるか(データセンターの建設)で動くので②です。
たとえば米国のAIサーバーメーカーは「半導体株」と一緒に語られがちですが、当サイトでは②に置きます。値動きの源泉が「設置される場所」にあるからです。2026年6月18日のスーパー・マイクロは、AIサーバー需要の拡大観測で10%上がりました。動いた材料は、チップの製造ではなくサーバーの需要そのものです。
電線3社(フジクラ・古河電工・住友電気工業)も同じ理由で②です。電線は半導体ではなく、AIデータセンターの建設や増設にともなう光ケーブルの需要で動くからです。当サイトはもともと「AI・半導体インフラ」を旗印に始めたので、当初これらを①側で扱っていました。テーマを6段階へ広げるときに、値動きの理由に立ち返って②へ置き直しています。実際、2026年5月の決算シーズンには電線3社が軒並み大きく動きました。古河電工は5月12日、経常利益56%増の決算で+16%。フジクラは5月14日、決算の慎重な見通しが嫌気されて-19%。半導体の需給ではなく、自社の決算とデータセンター需要への評価で動いた数日です。フジクラがなぜ②なのかは、深掘り記事で事業構造から解説しています。
逆に、メモリ(マイクロン・キオクシア)やMLCC(村田・TDK・太陽誘電)は①に置きます。データセンターに使う部品だから②では、と思うかもしれません。でも、これらの需要を動かしているのは「どこにDCを建てるか」ではなく、AIサーバー1台あたりの部品点数やサーバーの製造量そのものです。半導体や材料と同じ、上流の部品供給の話。半導体パッケージ基板のイビデンも同じ理由で①です。2026年6月15日にはMLCC各社が一斉高となり、太陽誘電+23%・村田+18%・TDK+12%と揃って急騰しました。材料はAIサーバー向けMLCCの需要拡大観測。データセンターの建設ではなく部品の需要で動いた、①らしい一日です。①の代表例である太陽誘電の中身は、深掘り記事で書きました。
境界2:②「容れ物を建てる」と③「電気を通す」のあいだ
ここは6段階化で新しく引いた境界です。以前は「データセンター・電力インフラ」を1つにまとめていましたが、②(建設)と③(電力)を分けました。
理由は、両者で資金が来るタイミングが違うからです。データセンターの建設や配線(②)は今まさに進む投資ですが、それを動かす発電・送電(③)は、発電所の建設に長い時間がかかるぶん、②に遅れて動きます。同じ箱にまとめておくと、この時間差が見えなくなる。だから、容れ物そのもの(サーバー・冷却・電線)は②、それを動かす電力(発電・送電・重電)は③、と分けています。AIブームが「電気の奪い合い」と呼ばれる、その電気の側が③です。国内の③はまだ薄く、米国の電力株が主役です。
境界3:④「使わせて稼ぐ」と⑥「地球を出る」のあいだ
末端の段階でも、判断が割れます。
OpenAIとAnthropicは④です。AIを使わせて稼ぐプラットフォーム・モデルの層そのもので、④の典型。大事なのは、④の所属条件が「黒字かどうか」ではないこと。両社はまだ赤字ですが、④の物語は「資本が集まる→収益化が実証される」という順なので、赤字でも巨額の資本を吸い込むプラットフォームは堂々と④に入ります。2026年の両社の上場は、これまで非上場で薄かった④を、中身の濃い段階に変えます。
一方、SpaceXは④ではなく⑥です。同じ2026年のIPOで注目されましたが、SpaceXへの資金は、宇宙にデータセンターを作る構想、つまり地上の制約を超えてAIインフラを軌道上へ出す賭けだからです。2026年にAI企業xAIを統合して以降、SpaceXは「軌道上知能」を掲げる存在になりました。クラウドやモデルで稼ぐ④とは値動きの性格が違う、最も投機的で最も遠い段階。それが⑥です。なお、この⑥をチャートに載せない理由は記事①で書いています。
複合企業は、主バケットを1つに
複数の段階に跨る会社もあります。その場合でも、当サイトではその株の値動きを主に駆動している段階ひとつに置きます。
わかりやすい例がソフトバンクグループです。同社は衛星通信サービスなど⑥(フロンティア)に触れる事業も持ちますが、株価を主に動かしているのはAI投資・プラットフォームの側なので、④に置きます。2026年6月1日にはAI投資の象徴として買われ、時価総額が一時トヨタを抜いて国内首位になりました。同じ会社が①にも②にも出てくると、いまどの段階が動いているのかが見えなくなる。だから事業が広くても、主因はどこかで1つに決めます。
なぜここまで分類にこだわるのか
最後に、なぜ置き場の理屈を細かく決めているのかを書いておきます。
「AI関連だから」で銘柄を無限に増やさないためです。材料に流されて銘柄を広げていくと、サイトは「何でもありのAIまとめ」になり、何のサイトか一言で答えられなくなります。明確な分類ルールは、その歯止め。動いていない段階に無理に銘柄を足して6段階を均等に見せること(薄め希釈)もしません。
分類は、当サイトが「記録」であるための背骨です。
当サイトは、AIによる産業革命に関わる銘柄が「なぜ動いたか」を公開情報をもとに記録するメディアです。特定銘柄の売買を推奨するものではなく、ここで説明した分類は相場を見やすくするための当サイト独自の整理です。最終的な投資判断は、ご自身の責任でお願いいたします。